26May

宇宙

「宇宙の魅力を語り尽くす ~拡張する宇宙への価値観~」サイエンスカフェ開催レポート

Mariko Tokita Mariko Tokita

いまだその全貌が明かされることのない宇宙。とても遠い存在のようですが、流星群や日食といった天体ショーは日常的にニュースでも取り上げられ、NASAによる重大発表はその度に世界中から注目を集めるなど、宇宙は多くの人が関心を持つトピックといえます。

多くの人の興味・関心を集めてやまない神秘的な宇宙の魅力を語らう場として、6回目となるサイエンスカフェ「宇宙の魅力を語り尽くす ~拡張する宇宙への価値観~」が、5月3日(水)にFUKUOKA growth next  1階スタートアップカフェ 福岡にて開催されました。

今回のゲストは宇宙飛行士を目指すタレント黒田 有彩さん。幼い頃から身の回りの不思議なことや科学が好きだったという黒田さんは、中学時代、作文コンクールで入賞した副賞でNASAを訪問し、その経験がきっかけで宇宙の虜に。現在はタレント活動という宇宙の魅力を多くの人に発信する“実務経験”を積みながら、宇宙飛行士を目指されています。

いまも昔も宇宙に魅了され続けている黒田さんのお話は、宇宙の魅力をより強く、そして身近に感じるものでした。黒田さんの独自の“宇宙観”が展開されたイベントの様子をレポートします。

<黒田さんの宇宙観>
宇宙観とは、宇宙についてどう感じ何を思っているかということ。価値観や人生観、という言葉にも変換できるかもしれません。日常の中に宇宙を感じることで確立されていった黒田さんの宇宙観は、大きく3つの考えから成り立っていました。



1つ目は、「生きることと死ぬこと」。
死ぬことに対して得体の知れない恐怖を感じていた5歳の頃、黒田さんは布団の中で目を閉じ普段より大きく感じる時計の音聞きながら、「1秒1秒刻まれた時間は過去に戻ることなく、自分は着実に死に近付いているんだ」と感じていたといいます。夜空を見上げた時の暗闇と、“死んだら目を閉じる=暗闇”というイメージが自分の中でリンクしていたため、死んだらどうなるんだろう、と考えると同時に、宇宙はどうやって始まりどう終わるのか、ということをひたすら考えていたそうです。そのため、黒田さんにとって宇宙は、すべてを内包しているものであり、始まりであり終わりである。

2つ目は、「当たり前は奇跡である」ということ。
当たり前のことを当たり前としてしまうと、その先に広がりがありません。しかし、宇宙という視点からものごとを見ると、当たり前のことが当たり前でなく、実はいくつもの奇跡の上に成り立っていていることに気づくことができます。

例えば、地球から見る太陽の色は、昼は黄色がかって見えたり、夕方は赤く見えたりしますが、宇宙から見るとその色は真っ白。私たちの目は、電磁波や紫外線、X線といういくつもの波長を持つ太陽の光の中の、可視光線という部分しか見ることができませんが、その真ん中の色は白で、実は太陽そのものの色が部分的に見えています。人間が太陽の可視光線を見ることができる目を持っていること、それは親世代・祖父母世代、もっと前からずっと変わらないことで、それは太陽系にある地球という星に生まれた証拠でもあり、私たちの祖先はここで生きてきたんだ、という実感など、宇宙からの視点で考えることで、当たり前のことが実はすごい奇跡なのだと感じることができます。

3つ目は、「すべては繋がっている」ということ。
リンゴが木から地面に落ちる現象と、太陽の周りを地球が回っている現象は、一見全然違うものだけれど、物理では”万有引力の法則”という、全く同じ方程式で書かれます。一見全然違うように見えることが、別の視点で考えると同じものということから、世の中はとてもシンプルにできているのだと気づき、黒田さんはすごく感動したのだとか。

また、宇宙飛行士の山崎 直子さんに聞いたエピソードとして、古代の人々は自分たちの健康や豊作を祈る際、男女関係なく化粧をし、それを介して宇宙と対話をし祈りを捧げていたため、宇宙を表す「cosmic」と化粧を表す「cosmetics」の語源は一緒なのだそうです。

黒田さんの話でいうと、宇宙と芸能活動はまったく関係がないように見えますが、黒田さんにとっての”好きなこと”という視点で見ると、その2つはとても深く繋がっています。いまの世の中にある宗教、科学、芸術といった、それぞれまったくベクトルが違うものも、元をたどれば1つなのかもしれませんね。



<宇宙を身近に>
イベント後半では参加者の皆さんから黒田さんへ、さまざまな質問が寄せられました。宇宙飛行士になったらまず何をしたいか、という問いには「まんまるな地球を見たい」、将来の宇宙開発に期待すること、という問いには「今後大切なことは宇宙をどうやって利用するかという発想。理系の専門知識を持たなくても、例えば純文学に詳しい人が関わった時に宇宙開発がどうなるのか、そういった化学反応に期待したい」。

宇宙人はいると思うかという質問には「いると思うが、地球に来ていたりというような、時間軸で重なることはないのでは」と、ひとつひとつの質問に丁寧に答えられていました。ちなみに、黒田さんによる宇宙にまつわる映画のオススメは「ゼログラヴィティ」だそうです。

黒田さんの考える宇宙の魅力、宇宙観を通して、改めて自分の宇宙観について考える場となった本イベント。宇宙を身近に感じるいいきっかけにもなった方も多いのではないでしょうか。

イベントの中盤では、参加者同士が隣り合った人たちとそれぞれの宇宙観を語り合う時間が設けられ、会場のあちこちで楽しく語る姿が見られました。福岡市科学館では、宇宙について語るコミュニティ「福岡市科学館 宇宙創造部」というプロジェクトをこれからスタート予定とのこと。今回のイベントで話し足りなかった方や、興味があったけどイベントに行けなかったという方は、そちらの動きもチェックされてみてくださいね。

Mariko Tokita

Mariko Tokita
ライター

2014年に東京から福岡へIターン。デザイン事務所広報・Webメディア運営を経て、現在は文具・雑貨メーカーの広報とライター業を行う。旅行と食べ歩きと映画が好き。